変形性股関節症

 股関節は股(また)の関節であり、骨盤臼蓋窩(きゅうがいか)と大腿骨骨頭とからなります。体重がもろにかかってくる関節であり、広い範囲で動くことができます。運動選手では股関節の柔軟性がスポーツの成績に大きく影響するため、ストレッチ体操では股関節を念入りに柔らかくすることが大切です。一方乳児期に股関節がはずれたままである先天性股関節脱臼や、ヤネの役割をする臼蓋窩の浅い臼蓋形成不全があっても3ヶ月乳児検診で見逃されたままで過ぎてしまうと、大人になってから変形性股関節症にと発展してきます。40才頃から股のつけねや臀部が痛くなったり、時には膝部に痛みを感じはじめることがあります。

初期の変形性股関節症では、膝痛や腰椎椎間板ヘルニア等と間違えられることもあるので、レントゲンMRI できちんとした検査を受ける必要があります。初期の治療はプール内歩行ゴム輪体操で臀部の筋力を落とさないようにしておきます。また痛みのない範囲でストレッチ体操をします。膝と同じ軟骨再生剤の注射を注入することもあります。体重の重い方は減量にも注意を払って下さい。臼蓋形成不全が40代で歩行時痛を感じるようになれば、必ずや変形性股関節症に進展しますので寛骨臼回転骨きり術が良好な結果をもたらしてくれます。股関節専門医の治療を要します。

一方程度の進行した末期変形性股関節症では、歩行困難、強度の股関節痛、股が開かない、立ったり座ったりが困難、立位の姿勢でお尻がひけている等々の症状がでてきます。60歳前後に人工股関節に置換するとよいでしょう。変形した臼蓋側にはプラスチック系のカップを入れ、破壊した大腿骨頭は切除してチタンやセラミック等の人工骨頭を挿入することとなります。どうしても20年ほどすると骨と器具との間にゆるみができやすいので、あまり年齢の若いころにすると、再手術をすることとなる可能性がでてきます。現在骨と器具との間のゆるみの生じにくい素材が名大の整形外科で開発研究中です。実用化も近いことでしょう。

 成人になってから大腿骨頭のみのつぶれてくる大腿骨頭壊死症が認められることがあります。これは大酒飲み、ステロイドホルモン内服者に発生しやすく、症状や治療法は変形性股関節症と同じです。医療保険上、特定疾患の指定を受けていますので、保健所からの書類MRIをつけて提出すると医療費自己負担分が軽減されます。酒をやめ、無理をしなければ、変形性股関節症よりは進行度が遅いので定期的に医師の診察をうけることが大切です。