ヘルニアの痛みはなぜ起こる? 椎間板ヘルニアは次の三つのメカニズムで神経に障害を生ずるため、痛みを感ずることになります。 ![]() 1、椎間板突出による神経圧迫 一番目の痛み発生の原因は椎間板に体重等の圧が加わり、椎間板が強く押されて突出した部分が後ろにある神経を圧迫してしまうからです。突出したヘルニア部分が大きくかつ硬いと痛みはひどくなります。 ヘルニアのサイズが小(〜中)までの場合には経皮的レーザー椎間板減圧術PLDDが有効といえます。術後一ヶ月ほどで75%程度の方は症状が軽快します。神経の直接的操作がないため、神経癒着等の発生はなく症状の悪化はまずありません。 ヘルニアサイズが中以上の場合には経皮的内視鏡ヘルニア摘出術PELDが最先端医療として非常に有益となります。局所麻酔で6mm(頸椎では4mm)の操作管を刺入して1〜2泊入院で行う手術です。90〜94%の有効率であり、大きく筋肉・骨・靱帯等を切除せず、神経や血管はほとんど触れずにおこなえるため、後遺症や悪化例はきわめて少ないといえます。 一方、 従来のラブ法やMED等のような方法は後方から神経を避けて行わねばならず、5〜10%に悪化例が発生することがあり得ます。ヘルニアの圧迫が除去されたにもかかわらず、しびれや痛みが依然として続くことがありますが、これは神経周囲の術後癒着の発生によるものであり、一旦発生すると難治性の傾向といえます。 2、神経周囲の癒着 二番目の痛み発生の原因は膨隆した靱帯もしくは脱出髄核が神経と線維性癒着を生じ、神経の滑りが悪くなってくるからです。長い間神経が動くことなく、靱帯や脱出髄核と接触していると、粘性の高いフィブリン等が出現し、線維性癒着が増強し、神経はさらに動けなくなってきます。本来、脊柱管内で自由に動くべく神経の滑走性は低下し、神経に引きつれや歪みが起こってきます。癒着剥離の治療法は脊柱管内の洗浄効果のあるブロック療法が有効です。@簡便で繰り返しが容易な仙骨ブロック、A癒着神経の近くから強力な水圧で剥離する神経根ブロック、B髄核と神経との癒着部分を直接的に水圧剥離する伊藤式椎間板内注入法等があります。 但し、これらの方法はヘルニア塊を小さくするわけではないので反復繰り返しが必要で、しばし改善しても再発する場合は少なくありません。痛みの程度やヘルニアが大きくない場合にゆっくりと時間をかけて治療する自然療法といえます。満足度は30〜40%程度といえましょう。一方、大きく切開した従来の観血手術による器質性癒着が一端発生すると難治性となり、ブロック療法の効果はきわめて不十分となります。 3、神経の炎症または機能低下 三番目の痛み発生の原因は神経の周囲が充血炎症したり、逆に神経の機能が低下して神経麻痺等を生じている場合が挙げられます。 充血炎症は初期の急性疼痛であり、鎮痛消炎剤が有効ですが、痛み止めは数週のみにして下さい。漫然と使用していると、胃潰瘍等になり得るからです。 神経機能低下は慢性で長期に続くことが多いので、リハビリでしっかりと機能回復をはかる必要があります。まずは、マイペースでの速歩を行ってみましょう。 |